これは、私がイギリスで会った人の話です。

この男性、仮にKさんと呼びます。

Kさんはその当時、ロンドンのレスタースクエアという繁華街に近いところで
日本料理店を開いていました。

私のような貧乏学生でもたまに行けるくらいに良心的なお値段で
美味しい日本食の食べられるお店でした。

そのお店はもともと私の友達がひいきにしていたお店で
私は友達に連れて行ったもらったのが、Kさんと会ったきっかけでした。

小さなお店だったので、少し手があると
Kさんはよく日本人のお客さんと世間話をしていました。

これはその時にKさん本人から聞いた、ダイナミックな移住ストーリーです。

Kさんはもともと日本で結婚していました。

20代のころ結婚した奥さんとの間にはお子さんが一人いて
当時のKさんは普通の日本のサラリーマンでした。

ところがお子さんが高校を卒業するころ、
ですからKさんが40代のころ、理由は分かりませんが、奥さんから離婚を切り出されて
話し合った末にKさんは離婚。
お子さんは元奥さんと一緒に暮らすことになりました。

40代で何もかもなくしたような気がしたKさんは
何を思ったのか、誰も知らない海外で好きに生きたいと思うようになったそうです。

そこで特に英語に興味も無かったものの、何となくイギリスに留学。

ところが半分やけくそみたいな気持ちでやってきたロンドンで
現在のイギリス人の奥さんとの出会いがあり、
離れて暮らしていたお子さんの理解を得て結婚。

そこから二人で働いて資金を貯め、この店を開いた・・・という話だったのですが
正直私は聞いていて
「そんなことある?」と心の中で10回くらいツッコミを入れました(笑)。

確かにKさんはダンディな方でしたが
ヤケクソ留学して、現地で再婚相手の女性に出会うなんて出来すぎではありませんか。

でもKさんの隣で奥さまもニコニコと話を聞いていらしたし
イギリスで内輪だけで行った結婚式には
日本からKさんのお子さんも出席したそうで、その写真も見せてもらいました。

事実は小説よりも奇なり」というのは本当で
こういうドラマティックな話もたまにはあるんですね。

でも本当にビックリしたのはその話をしていたときに
私たちのテーブルの向かいにいた、イギリス人のおじいちゃんがやって来て
一緒に写真を眺めながら
「いやぁ~、本当にKがロンドンに来てくれて良かった。
私はこの店が大好きなもんで・・・」
と話に加わってきたことでした。

まあそこまでなら「フレンドリーなおじいちゃんだなあ」で終わるところですが
その時、Kさんの奥さんが
「ああノアさん紹介するわ、こちら○○卿。うちの常連さんなの。」
と言ったのです。

もう名前は忘れましたが、奥さんによると
その方は英国王室から賜った称号をお持ちの貴族のおじいちゃんだそうで
その後も、ときおりそのお店で顔を合わせると
「やあ」とにこやかに声をかけてくれました。

どうやら○○卿は夕方になると、毎日のようにそのお店に来るのだそうで
Kさんとはすっかり仲良しのようでした。

本当の上流階級の人って、こちらが拍子抜けするほど気さくなんだなと
このとき初めて知りました。

まあ生まれながらの特権階級ともなると、
もはや自分を大きく見せたり良く見せる必要もないので
かえって肩の力が抜けて、周囲の人に優しくなれるのかもしれません。

それにしてもKさんの人生の展開が、
日本では考えられないような形だなあと思います。

「海外で生きる」っていう選択をすると
こういうことも普通に起こる可能性があるんですね。