イスラムの男性にとって「ゲイ」とは
アレックスがゲイであることを知っていたのは おそらく私だけだったと思います。 けれども物腰のやわらかさや、洗練されたファッション、 その辺の女性よりずっと美しい顔立ちのアレックスのことを ボスやカリムなどの、イスラムの男性たちは 「He is a girl.」 「He is weird.」 と、アレックスのいないところでよく噂にしていました。 ゲイ、とはっきり口にしているのを聞いたことはありませんでしたが それはゲイという単語を知らないか? もしくは知っていても口にしたくないのか・・・? 私は彼らの様子を見ていると、何となく後者の方、 「ゲイ」などという単語は口にもしたくない、という蔑むような ツバでも吐き捨てるような感じを受けました。 またアレックスも自分が陰で噂になっていることを 何となく感じていたようで 特にボスやカリムの前では、ふるまいに用心しているのか 緊張している様子が伺えました。 まさかゲイだと知れたところで 危害を加えられることはないでしょうが 決して得にはならないことを察していたのかもしれません。 日本でも確かに、ゲイの人たちは今もマイノリティの存在で そのことを知られないように、 ひっそり暮らしている人が多いと思います。 でももし知られたとしても、 あからさまな嫌悪の目や、 人格も否定されるような扱いを受けることは 一昔前に比べると減ってきているのではないかと思います。 しかしイスラムの、 特に男性たちのゲイに対する嫌悪感というか それは間違っていて、あってはならないことだ、という 彼らのゲイに対する絶対的なタブー感には、強烈な印象を受けました。 「Men like a girl is no good!」 「I hate a man like a girl. It's no good!」 とにかくゲイは「No good!」ということらしいのです。 確かに種の存続という意味からいえば 彼らの言うようにゲイを認めるのは良くないのかもしれないし だからといってゲイを全否定するのは ひとりの人間の尊厳を奪うことでもあります。 まあこれはどちらが正しい、正しくないということではなく 一つの物事に対する見方の違いなので 私もあえて何も言いませんでした。 というか、話をしても分かり合えそうな気がしませんでした。 でもこういうむき出しの「No good!」の声を聞けたのも 今思えば貴重な体験だったと思います。